キッキングゲームという分岐点
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12/22に横浜スタジアムで行われた高校日本一決定戦「クリスマスボウル」。春日がゲストで現れたことだけ触れたけど、結果や内容には触れてなかったね。
今回の対戦は4連覇を目指す佼成学園(東京1位)と、2年連続出場で初の日本一を目指す立命館宇治(京都1位)。つまり2年連続で同一カードということ。昨年は前半に21得点をあげ圧倒的なリードを奪った立命館宇治が、徐々に点差を詰められ4Qにまさかの逆転を許すという劇的な展開だった。1年前の特異な展開は、今年の両チームの戦略にも少なからず影響を及ぼしたのではないか。
春日のコイントスによって開始された大一番。1Qは両者無得点。昨年とは対照的な立ち上がり。オフェンスは得点どころか1st down 更新もままならない。ディフェンスの健闘が光る。2Qに入って先制したのは佼成。自陣からのランプレーで独走。エンドゾーン僅か手前まで迫る。その後の佼成のパワープレー2つを続けて押し返した立命館宇治のディフェンスも見事だったが、3rd down に追い込まれた佼成がエースレシーバーに通した意地のTDパスも見事だった。
得点は7-0となったが、この点差は1分もたたないうちに縮まる。直後のキックオフで立命館宇治のリターナーが快足を飛ばす。減速することなく密集を抜けると一気にエンドゾーンへ。歓喜に湧いていたメインスタンド側が一気に静まり返る。ここで、立命館宇治は序盤ながらTFPで奇策に出る。FGフォーメーションの片側ウイングがモーションで目を引き、その逆サイドにホルダーからキッカーへピッチするスペシャルプレーを選択したのだ。しかし佼成ディフェンスはうろたえることなく落ち着いてこの奇策に対処。7-6の1点差。試合の流れも一進一退となった。
続く佼成のオフェンスシリーズは簡単にパントに追い込まれた。また膠着状態に戻り、このままの点差でハーフタイムに入ると思われた矢先、佼成に3連覇中のチームとは思えないミスが起こる。ロングスナップが大きく横にそれたのだ。パンターはコロコロ転がるボールを拾って逃げながらなんとかボールを蹴る。もちろん飛距離は稼げず、立命館宇治はハーフライン付近からの絶好のフィールドポジションを得た。しかし、ここでもオフェンスの爆発は見られず、立命館宇治もパントに追い込まれる。ミスに漬け込めなかった立命館宇治と安堵の佼成。タッチバックとなり自陣20ヤードからの佼成の攻撃は、久々にダウン更新を記録しハーフライン付近まで持ち直す。リードしている立場であり、余程の事がない限りこのままタイムイートでよかった。例えノーフレッシュでも陣地を挽回してこのままハーフタイムで問題はなかったはずだ。
しかし、ここで欲をかいたのかパスを試みた際、QBがラッシュをかわしながら粘ってターゲットを探しているうちにディフェンダーに捕まり痛恨のファンブルロスト。無理をしなくていい場面だっただけに佼成にとっては悔やまれるプレーとなった。ここから、立命館宇治のオフェンスがようやく噛み合い、ゴール前まで迫る。スパイクで時間を止めた時点で残りは30秒ほど。直後のプレーは、タイムロスを恐れない左オープンへのランプレー。見事TDを決め逆転に成功する。先ほどのTFP失敗を取り返すべく2ポイントを狙うが、今回も失敗。12-7。1TDで逆転という微妙な点差。立命館宇治としては関西決勝の1点をめぐる展開がちらつき、喜びきれない部分もあったのではないか。佼成も不要な失点を喫したことで、両チームとも悶々とした気持ちでハーフタイムを迎えたと思われる。
後半も3Qは膠着状態。相変わらず両チームのディフェンスの安定感が光る。立命館宇治は度々ロンリーセンターから特殊なプレーを繰り出すも効果的なゲインには至らない。試合が動いたのは3Q終盤。パントの蹴り合いが続くなかで、立命館宇治のパントリターナーが魅せた。前進しながら比較的浅い位置でボールをキャッチしたあと、その勢いでカバーチームの包囲を抜け、連続スピンでタックルを外しながら敵陣深くまでボールを戻した。前半同様、ここぞの得点チャンスで立命館宇治のオフェンスが牙を剥くのかと思いきや、やはりここでも佼成のディフェンスが踏ん張りFGどまり。15-7。まだなんとか1ポゼッション差だ。この時点で既に4Qに入っていたため、佼成も徐々に追い込まれていく。しかし、昨年の例がある。立命館宇治も全然リードした気にはなれなかったろう。
しかし、この後もディフェンス合戦が続き、試合はなかなか動かない。逆に残り5分を切ってから立命館宇治がFGを決め、2ポゼッション差に広げ、試合の大勢を決めた。最終スコア18-7。なんと後半は両チームともTDゼロという守り合い。立命館宇治は悲願の初優勝を果たし、佼成学園は数年前から続く公式戦連勝記録がここで途切れた。
実力の拮抗した非常に良い試合であったが、だからこそと言っていいのか、勝負の分岐点となったのはキッキングゲームだった。先制された直後のリターンTD。後半の均衡を破ったパントリターン。一方で佼成は上記のビッグプレーを許した上に、パントのスナップミスもあり、カバーチームが精彩を欠いた。総じて苦戦の少なかった東京大会や関東大会での戦いがそうさせた可能性も否定できない。
いずれにしても、お互い高レベルで面白い試合を観させてもらった。春日がどのような感想を番組で述べるかわからないが、視聴者に興味をもってもらえるコメントを期待したい。いかんせん甲子園、JAPAN Xと観た後だと、クリスマスボウルの観客の少なさはさみし過ぎる。もっと集客して東京ドーム開催に戻そう。そして「約束の卵」を高校フットボールのテーマソングにしよう。春日さん、よろしく。
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