2020 ライスボウル
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ちょっと遅れましたが、ライスボウル観戦記を。正月休みの合間を縫って行って参りました、東京ドーム。フットボーラーにとっても約束のかの地。
以前も記事にした通り、対戦カードは2年連続で関西学院大学vs富士通。富士通は4連覇がかかっており、関学は28年間チームを率いてきた鳥内監督の最終戦となる。
東京ドームは、「どこにこんな人がいたのか」と思うほどの人。鳥内監督の最終試合ということもあって関学関係者が全国から集まったのかと思えるほどだった。(実際そうなのかもしれないが。)もちろんアメフトの試合にここまで観衆が集まるのは喜ぶべき事だ。
試合は戦前の予想通り、富士通が圧倒的な地力の差を見せつけ38-14で勝利。関学オフェンスの出来は悪くなかった。ただ、「いける」と思う度に富士通ディフェンスのビッグプレーに飲まれてしまい、それが要所での反則にも繋がった。その中にあって、前半唯一の得点を生んだRB三宅のカウンターピッチによる独走TDは一筋の光明だった。
しかし、関学ディフェンスは全くといっていいほど歯が立たなかった。富士通の第1シリーズにお目見えしたフロントに8人をセットするディフェンス隊形は、相手のエースRBグラントのrunを意識したものだが、すぐさま弱点のパス攻撃で打開され、かなり早いテンポのノーハドルによりムーブメントも入れにくい状況にされた。そもそも関学ディフェンス側も相当混乱しており、セットに手間取っていた。このご時世に8メンフロントは一般的にワイドなフォーメーションに対応しにくい。相手のパーソネルによってルールを決めていたのなら尚更だ。
結果、前半だけで4つのTDを奪われ、そのうちの1つは前述の関学唯一の得点直後にRBグラントが独走で返したもので、関学に与えたダメージは計り知れない。また4TDに要したプレー数はわずか20と一方的な展開であった。
終盤は富士通がメンツを下げたためある程度試合の形になったが、それでも、終了間際に1TD返すにとどまった。ただし関学は最後にオンサイドキック成功からの攻撃でゴール前に迫る意地とプライドを見せつけた。残念ながらTDには至らなかったものの、学生代表として気高く戦う姿勢は観衆に感動を与えた。
一点気になったのは、この試合幾度となく関学にキックオフリターンの機会があったが、リターナーはほぼフェアキャッチで対応していた。私は以前の記事で、ここにスペシャルプレーの策を仕掛けるのではないかと予想したが、全くの逆だった。深く考えすぎかもしれないが、昨年の鳥内監督の発言が気になる。実力の乖離と学生の安全面からライスボウルの枠組みについて疑問を呈した例の発言だ。キックオフリターンはフィジカルで大きく勝る社会人プレーヤーが、全速力で走り込み、その勢いのままブロッカーやボールキャリアと接触する、ある意味もっとも危険な場面と言える。安全面の配慮から、可能な限りフェアキャッチで対処することを決めていたのかもしれない。いや、考えすぎか。。。
結局、今年のライスボウルも富士通の圧勝のうちに終わった。しかし関学に悲壮感はなかった。試合後に相手チームの選手と笑顔で記念写真を撮っている姿などは、やはり勝敗ではないところに意義を見出だしていたのではないかと思う。だからと言って「負けて当然」として試合に挑んだわけでもなく、結果として、観る者に感動を与えたのだから素晴らしい。
今年もおそらくライスボウルのあり方についての議論は再燃するだろう。制度改革は行われるのだろうか。これは日本のフットボール全体のあり方も問われる重要な命題であるゆえ、十分な議論を尽くしてほしい。
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